「映画の中の地下基地のような通路をくだると」

蘇南高等学校長

2022年06月22日 17:57

 昨日は、年に一度の木曽郡移動校長会でした。小中校の校長が一堂に会し、研修をする機会です。
 今年度は、大桑中学校さんが当番で、明るく元気に学んでいる生徒の皆さんの姿を頼もしく拝見しました。

 校内での会議が終ったあと、地域の学習教材を探究するという目的で、木曽川の水力発電の施設2カ所に巡検に行きました。いずれも関西電力の施設なのですが、普段は公開されていないものですから、とても貴重な学びとなりました。

 一つ目は、須原発電所資料館。水力発電のしくみが模型とともに説明されているのは、他の資料館と同じなのですが、この資料館ならではの宝物は、大正時代に福沢桃介(福沢諭吉の娘婿)が木曽川水系の発電所を建設した時、エジソン、ロイド・ジョージ(英首相)、クレマンソー(仏首相)、山形有朋といった当時の超有名人のメッセージを集め、建物に彫り込んだことについての資料です。欧米の有名人のメッセージは、その後、建物から除去されて今は見ることが出来ません。戦時統制のためとも老朽化のためとも言われています。しかしこの資料館には、メッセージそのものや、在りし日の建物の写真が保管されています。木曽川の畔の建物に、ヴェルサイユ会議の時代の世界を動かした人々の言葉が並んでいた光景を想像することができました。

 二つ目は、大桑村の殿地区にある木曽発電所。外観はとても質素な建物で、桃介が一流のデザインで建設した読書発電所(重要文化財)などには遠く及びません。ところが地下に建設された発電所で、マイクロバスごと映画の中の地下基地のような通路をくだると、壮大な発電設備が稼働していたのです。出力も他の発電所とは桁が違いました。さすがにここは桃介の時代からずっとくだった昭和43年(私が2歳だったとき)の建設です。関西地方の電気をつくりだす巨大な発電所が、外観からはまったくわからないように存在していることに、とても驚いたのでした。




 まだ自分の知らない、ふるさとの文化・産業がたくさんあるのだということを再認識した研修会でした。