「プールの前の伐採した柿の木が美しい工芸品に変身する」
蘇南高校のプールは、敷地の最も奥(つまり丘の上)にあります。その前に大きな柿の木があり、たくさんの渋柿を実らせていました。柿は熟せばおいしくなりますから、野生のクマが近づいてくる可能性があります。
一昨年度のことですが、生徒の安全を第一に考え、柿の木を伐採しました。木は細かく刻んで希望者に薪として配布しましたが、精霊の宿りそうな樹木を倒したことには、当然ながら心の痛みがともないました。
本校では、美術の時間に、南木曽の伝統工芸である「ろくろ工芸」を学習しています。ろくろを回転させて木を彫り出し、お皿やお椀を作るのです。とても難しい技なのですが、伝統工芸士で「ヤマイチ工芸」というお店(妻籠から飯田に向かう清内路峠の「木地師の里」にあります)を経営されている小椋一男さんが指導にあたってくださり、生徒たちは今も楽しく学んでいます。
その小椋さんが、「学校の記念になるような作品を柿の木から創ってみましょう」と幹の一部を持ち帰ってくれました。
そしてこのほど、小椋さんが「花器ができました」と蘇南高校に作品を寄贈してくださったのです。薄い美しい流線型のフォルムをもった「UFO花器」に、蘇南高校の柿の木が変身したのです。
なんと!・・・と声をあげて、時間の経つのを忘れて、私は花器にみとれました。柿の模様が表面にうかびあがり、つややかで端麗な姿が、まさに「もうひとつのいのちの形」であることを感じさせてくれます。
蘇南高校の玄関ロビーに飾る芸術品が、またひとつ増えました。
私は蘇南高校を美術館のような学校にしたいのです。是非、皆様も本校にお越しの際はご覧ください。
小椋一男さん、心から御礼を申し上げます。