「ヘリコプターと学校環境」

Posted by 蘇南高等学校長. 2022年08月31日18:24
 今年に入って、南木曽町では週2~3回のペースでヘリコプターが何回も山の中腹に物資をおろしています。木曽川の水力発電を大阪圏に送電するための鉄塔が老朽化したために、鉄塔の架け替え工事をしているからです。
 木曽川の対岸での作業とはいえ、ホバリングしているときのプロペラ音がかなり大きく、しかも一日に何回も行われます。工事業者から3年がかりのものだと聞いて、愕然としました。しかも町では(私が相談した時は)騒音ととらえていないとのこと。どの場所に住んでいるかによって音の響き方がとても違うらしいのです。

 6月に全校生徒へのアンケート調査を行いました。あわせて騒音測定器で実測しました。
 その結果を関西電力に伝え、共同で騒音調査を再度行うことにしました。文部科学省の学校環境衛生基準では、学校の周辺の音は55デシベル以下ということになっていますが、最大時75デシベルあるということがわかりました。ただし窓を閉めると45デシベルになります。
 関西電力からは、①冷房のない教室への冷風機を設置、②定期考査・式典・発表会などの日の飛行停止などの配慮をすることが約束されました。冷風機は7月から稼働しています。9月の飛行計画を見ると、平日の飛行回数をさらに減らしてくれているようです。

 ただ、これからの時期は冷房を入れずに窓をあけておいたほうがよいときもあります。新たに生じてくる課題は、関西電力と話し合いをしながら、私たちもどのような工夫ができるか、その都度考えていくつもりです。

 ちなみに、沖縄の嘉手納基地の騒音測定結果は、ピーク時に105デシベルであったという沖縄県の調査報告があります。身近な経験をもとに、世界の人々のことを想像するきっかけにもしようと、生徒に語りかけています。
  


「どうかこれからもよろしくお願いいたします」

Posted by 蘇南高等学校長. 2022年08月30日18:07
 雨模様が続いていますが、今日の夕方の南木曽は予想外の大雨になり、稲光とともに激しい雷鳴が響き渡りました。あわてて校舎から外に出ないよう放送をかけ、先生方で校内の巡視と通学路のパトロールを行いました。
 1時間ほどで空が明るくなり、生徒たちも帰宅していくことができました。

 さて、私事で恐縮ですが今日は、56回目の誕生日です。夕方の雷があったものの、穏やかな一日を南木曽で過ごすことができました。
 改めて生徒・教職員・保護者・地域の皆様、そして教育の仕事や世界史の仕事でお世話になっている皆様、友人と家族に、感謝の思いでいっぱいです。本当にありがとうございます。

 昨年の秋から今年の春にかけて、岩波書店から2冊の本を出すことができました。
 予告されている岩波書店の仕事をしばらく続けます。『岩波講座世界歴史』シリーズの編集と、最大の難関は、単著の岩波新書です。
 岩波新書のほうは、新しい登山路を切り拓くような思いで書いています。書いては消し、書いては消し・・・をしながら、時々猛烈に前進したりして、書き続けています。ヘンな譬えですが、「つるの恩返し」のつるの機織りの気分なのです。
 
 もちろん執筆活動は、夜や休日の余技であり、蘇南高校の校長の仕事に全力で取り組む覚悟です。
 毎日の校長ブログ(&時々のfacebook)で高校という学びの場の魅力を、これからも発信し続けていきたいと思っています。
 いい年をしていても未熟な人間ですが、どうかこれからもよろしくお願いいたします。
  


「校長再び実験台になる」

Posted by 蘇南高等学校長. 2022年08月29日19:54
 先週の金曜日の放課後、3年生の女子2名が校長室に、「お願いがあって来ました」と訪ねて来ました。
 「私たちの総合探究で開発しているバスボムの新しい試作品ができたので、使ってみていただけませんか?」

 ・・・なんと! 以前に私は生徒の試作品のバスボムの実験台になりました。温泉マニアかつ入浴剤マニアの私としては「喜んで」ということになります。
 今回の新しいバスボムは、南木曽のドライフラワーで作ったもので、ゆくゆくはクロモジで(!)バスボムを作る計画なのだとか。ドライフラワーのバスボムなんて、確かに初めての経験だと、家に帰ってからアルミホイルを開いてみると・・・なんと! 見た目は、(生徒の皆さんには申し訳ありませんが)毒々しい。

 ドキドキしながらバスタブに入れてみます。

 おお!・・・花びらが浮かんできました。泡の吹き出し方もよし。身体に無数の泡が付着して炭酸ガスに大いに温まります。ところが・・・「おや、花の香りがないかも・・・」
 意外にも香りが消えてしまっているのでした。なぜなのでしょう。でもここから探究がまた始まります。

 校長はいつでも実験台になるので、あくなき探究を!

  


「先生の授業をどのように評価するかを生徒が考える」

Posted by 蘇南高等学校長. 2022年08月26日20:20
 本校では、年に2回、すべての教員の授業について、生徒からの評価を行うことにしています。匿名性を担保し、10の項目について生徒が5段階で評価をします。
 2年前に、私は評価項目をどのような内容にするかについて、生徒会執行部の生徒たちと対話をして改訂をすることを始めました。先生の授業をどのように評価するかを生徒が考えるということになります。

 今年度も生徒会執行部の生徒たちに、どのような改訂をしたらよいかを聞きました。
 生徒の意見を聞くと、なるほどと思わされることが多くありました。例えば、①タブレットを効果的に使用しているかどうかという質問を独立させる。②授業の進度と難易度を別々の質問項目にする。③興味関心をもてる授業かということをズバリ焦点化する・・・などです。

 「何を評価してもらいたいのか、生徒にわかりやすく質問項目を作るべき」…との意見に、「誠にごもっとも・・・」と私は頭を下げました。
 「私たちが評価することに意味はあるんですか?」と聞かれ、「先生たちはとてもこれを真剣に受け止めるので、これは君たちから先生たちへの通知表なんですよ」と私が答えると、生徒たちが「へえ、なるほど」と感心してくれました。通知表って、自分の今の成果と課題を確認するための参考資料なのですから。

 生徒の意見を聞くことは、本当に学ぶところが大きいと、いつも思っています。

  


「夏だ、うな重だ、でも黙食」

Posted by 蘇南高等学校長. 2022年08月25日17:23
 夏休み明けの二日目、今日も学校生活が平常日課で展開していきました。
 校長と教頭は行政職の職員と一緒に親睦会を結成しているのですが、このコロナ禍ゆえに暑気払いの外食もできません。そこで夏を乗り切るために、駅前の橋本家さんからうな重をランチに出前してもらって、楽しもうという計画をたてました。

 しかし、この第7波のなか、学校では生徒たちに徹底した黙食を指導しています。生徒の皆さんも守ってくれているので、昼食時間の本校はお昼寝の時間のように静まり返っています。
 今日のうな重も、私たちは各自の仕事部屋で黙って味わいました。

 でも、おいしかった! おいしいものに言葉はいらないのです。
  


「生き続けることと自分を大切にすることを沖縄戦のただなかで訴えた人」

Posted by 蘇南高等学校長. 2022年08月24日18:32
 今日から蘇南高校は、休み明けの学校再開です。全校集会の校長講話のあと、整理テスト(3年は進路ガイダンス)を行いました。生徒の皆さんの元気な声が校舎のなかに満ちてくるのを聞きながら、私もとても幸せな気持ちになりました。

 校長講話は、沖縄の日本復帰50周年の節目に、沖縄の歴史や課題について考えてほしいと生徒に語りかけてみました。
 題して「ある野球選手の人生を見つめる」。

 戦前の日本で、旧制第三高校から東京帝国大学に進み、内務官僚になった島田叡(しまだあきら)の生涯をたどりました。
 東大在学中に母校三高の監督になった島田は、合理的な練習や対話を重ねるチーム・ビルディングを行いました。現代に通じるスポーツマンシップの人でした。その島田は内務官僚になり、アジア・太平洋戦争末期の米軍上陸間近の沖縄県知事に派遣されます。前知事が東京に出張したまま沖縄に戻らず、県政が混乱しているなかでの島田の派遣でした。死ぬことになるからやめろと止める周囲・家族に対して、「おれが断ったらだれかが行かなならん。」と言って、沖縄に赴きました。

 島田知事は、米軍の上陸に備えて、住民の疎開、食糧の確保、官吏の逃亡の禁止などを積極的に推進しました。
 いよいよ米軍が上陸して、県民と自分が戦火のなかに巻き込まれていくなかでも、自分たちの壕に逃げてきた余所者をかくまうことや、非常時には畑の作物を余所者が食べても罰しないことなどを指示していきます。周囲の部下・友人たちには、投降してでも生き続けること、自分を大切にすることを説きました。
 摩文仁の丘まで逃げた島田の最期がどのようなものだったのか、今でも諸説ありますが不明のままです。

 時代に流されずに、人間としての一番大切なことを見つめ続けた島田叡の生き方を、生徒たちに伝えました。
 島田が力説した「生き続けることと自分を大切にすること」は、今の時代であっても一番大切なことであると思うのです。

 校長講話の全文は、コチラです。(ちなみに講話の時には写真入りのパワーポイントを使っています。)
https://www.nagano-c.ed.jp/sonan-hs/pdf/20220824_kouwa.pdf

  


「ユリがここかしこに咲く夏休み明け」

Posted by 蘇南高等学校長. 2022年08月23日16:27
 すっきりしない不安定な天気が続いていますが、猛暑がやわらいできたのはよいことです。
 蘇南高校の通学路や校内では、あちこちにテッポウユリが大きな純白の花を咲かせていて、夏景色を飾ってくれています。
 本校の正面玄関の前のツツジの植え込みのなかから一輪の背丈の高いテッポウユリが、凛とした姿で開花しており、晴天が見えた昨日の昼下がりにスマホで撮影しました。本校の生徒たちひとりひとりの姿が、こうあってほしいという願いを込めて…です。

 今日で夏休みが終わり、明日から授業が再開されます。感染症関係の心配な報告が昨日は相次ぎましたが、なんと今日は一件もなし。空は曇っていますが、私の心には陽射しが射し込んでいます。

 生徒の皆さん、明日からまた一緒に学んでいきましょう。
 「自分はこんな力があったんだ」と、新しい自分との出会いが生まれるような学校生活になることを、私たちは精一杯応援していきます。
  


「大きな課題に私たちは直面している」

Posted by 蘇南高等学校長. 2022年08月22日16:33
 全国的に新型コロナウイルス感染症の第7波の爆発的とも言える拡大が続いています。
 本校の夏休みは明日までで、8月24日(水)から授業を再開します。ここ数日で、県下の高校はどこも夏休みを終えて新学期を始めるのだと思いますが、おそらくどの高校もこの状況に苦しむ可能性が大きいでしょう。
 私もまた、今の様子を見ながら、学校再開後をとても心配しています。
 いっそのこと、最初からオンライン授業に切り替えようかと思いました。しかし、一切の行動制限がかかっておらず、家庭由来の感染が多い現状を見ると、学校で生徒たちが会うことをやめれば感染がおさまるとは思えません。

 オミクロン株になって重症化リスクが低くなったということばかりがクローズアップされていますが、「感染力が強い」というおそろしい事実をどうとらえるかを、学校でも考えて行かねばなりません。特に発症の数日前から他者に感染させる可能性が大きいという事実が、重いのです。
 なったらなったで仕方ない(全員がこうではないのですが…)、ともかく社会経済生活を展開しよう(これにも当然の理があるのですが…)・・・という流れのなかに学校が置かれている結果、就職試験・進学試験を控えている3年生たちをどう守るのか、そして思い切りのびのびできるはずの新学期を生きる1・2年生をどう守るのか。大きな課題に私たちは直面していると思っています。

  


「アンネ・フランクの隠れ家のポスターを飾る」

Posted by 蘇南高等学校長. 2022年08月19日16:00
 夏休み明けに生徒を迎える準備をしています。
 校長室の入り口のところに、アート作品を交代で飾っている「校長室ギャラリー」に、第14回展示として、オランダのアンネ・フランク記念館のポスターをかかげました。こんな説明をつけました。

 「1942~44年、ナチス・ドイツに占領されたオランダで、ユダヤ人のフランク一家は、隠れ家で生活をした。一家はやがて密告によって逮捕され、収容所に送られた。生きのびることができたのは、父オットーだけであった。次女アンネ(13歳)は隠れ家の日々を詳細に記録しており、父は戦後、その原稿を『アンネの日記』として刊行した。」

 このポスターは、フランク一家の事務所兼自宅の3・4階に「もしものとき」に備えて作られた「隠れ家」の構造を詳しく描いています。入り口の秘密のドアには本棚を打ち付け、見事なカムフラージュをしてあることもわかります。
 アンネたち(父母姉と一緒)は、知人のファン・ダーン一家3人(アンネは一家の男の子ペーターのことを好きになります)と歯科医デュッセルと合計8人で、この隠れ家での生活を始めることになりました。戦争が終わる一年前の1944年8月5日、何者かの密告によって隠れ家が摘発され、8人全員が逮捕されるまで、隠れ家生活は約700日にも及びました。

 この危機の日々の中で、自分や世界を見つめ、感動的な『アンネの日記』を書いたアンネ・フランクのことを、私は心から尊敬しています。

  


 「南木曽町の教育に関わる職員がみんなで研修する」

Posted by 蘇南高等学校長. 2022年08月18日17:30
 今日は、南木曽町のこども園・小学校・中学校・高校・教育委員会が一緒に研修会を行いました。年2回行っていた研修会は、令和2・3年度はすべてコロナのために中止でした。今年度も4月の研修会は中止。南木曽町の研修に、私は一度も参加しないままでした。

 今回はあらかじめ、コロナの状況が悪化することを見通して、オンラインでも実行しようと計画を進めてきました。そして3年ぶりの実施にこぎつけたのです。
 幹事校の南木曽中学さんのご尽力には感謝の思いでいっぱいです。

 研修のテーマは、ICT教育でした。
 信州大学の森下先生からICT教育の意義と可能性について講義をしていただき、そのあとブレイクアウトルーム(オンラインの分科会)にわかれて、保小中高のICT教育の実践を交流しました。初めて校種をこえて互いの実践の成果を語り合えたことは、私にとって大きな感動でした。
 
 長野県でもコロナ第7波が本当に深刻になってきました。
 このような状況だからこそ、ICTをどのように教育に活かしていくかを学べた今日の研修は、とても意義深いものでした。