「わかった!」

 今週は、夏休みとはいえ、全学年の補習や工業科の資格取得のための講習会など、学校は賑やかです。
 特に、昨日と今日は、3年生の「校内集中補習」を実施しました。本来は学習合宿を実施したかったのですが、コロナの感染防止のため宿泊行事は避け、そのかわりに朝から晩までひたすら勉強をする生活習慣にきりかえることを、登校しての「集中補習」という形で実施したのです。
 実に朝8時50分から19時50分まで、11時間(2日で22時間)近い受験勉強です。昨日の夕方は、私からおやつのショートケーキの差し入れがありました。

 残りもう1時間というとき、教室を訪ねて何人かの生徒に感想を聞きました。
「死ぬほど勉強しましたよ。」
「家庭学習の量も増えたので、進歩しています。」
「数学が解けた時の気持よさっていいなあと思いました。」
などなど、実に頼もしい。21時間も学習を続けているのですが、グタッとしておらず、表情が爽やかなのもいい。

 ふと自分の高校3年生の時のことを思い出しました。志望校を決めると、そこまで到達しなければならないという焦りに、数学の問題集が「壁」のように見えてきました。問題集に向き合うだけで心臓がドキドキしてしまい、息苦しくなった。まして解けない事態になろうものなら、天井がぐるぐる回り出すような感覚に陥りました。
「何のために数学をやってるんだろう」
あるとき苦しい思いとともに、湧き上がる疑問を、親しい先生にぶつけてみたことがあります。
「数学って、解けたとき、爽快だよねえ。それが楽しみだから解くって、大事じゃない?」
というのが、その先生の答えでした。
 聞いたときは肩すかしのように思えたのですが、その後、その言葉が妙に心に残り、受験時代の自分をけっこう支えてくれました。

 だから本校の生徒から「数学が解けた時の気持よさっていいなあと思いました。」という言葉を聞けて、とても嬉しくなったのです。
 パスカルにならって、「わからないことが連鎖していくのが、学問なのだ」というのが私の持論なのですが、でも「わかった!」という喜びはとても大切だと思います。
 その喜びは、「生きていてよかった」に通じるのかなあと思っています。

「わかった!」