「『思い』は必ず人々につながりをつくり、受け継がれ、それが次の希望をうみだしていく」

 「レ・ミゼラブル」(2012年、英・米、トム・フーパー監督)という映画が私は大好きです。ヴィクトル・ユーゴーの原作をもとにしたミュージカルの映画化です。「レ・ミゼラブル」はフランス語で、私の子どもの頃は「ああ無情」などとわけのわからない日本語訳がつけられていました。「悲惨な人々」という意味です。
 主人公のジャン・バルジャンは、1本のパンを盗んだことをきっかけになんと19年間の監獄生活を送ることになり、獄から出た後、ひとりの司教との出会いによって誠実に生きていくことを決意します。その後、人々に慕われ市長にまでなるのですが、様々な苦難が彼を襲い続けます。そのようななかでも、彼は大切な人に対する「真実の変わらぬ愛」を守り続け、そして人々の「いのち」を守るために革命の隊列に加わっていきます。

 物語の舞台になったのは、19世紀前半におこったフランス七月革命です。フランス革命の成果を踏みにじったブルボン王家に対して、人々が再び立ち上がった革命の闘いの場に、ジャン・バルジャンは身を投じていきます。

 映画「レ・ミゼラブル」のラストシーンは、たとえ闘いの途中でいのちを落としたとしても、闘った「思い」は必ず人々につながりをつくり、受け継がれ、それが次の希望をうみだしていくというメッセージを私たちに投げかけてくれます。
 その場面で流れるのが、「民衆の歌」です。

 闘う者の歌が聴こえるか。
 鼓動があのドラムと響き合えば、
 新たに熱い生命が始まる、……

 列に入れよ、我らの味方に。
 砦の向こうに世界がある。……

 皆さんの中にはすでに知っている人も多いと思いますが、このほど日本のミュージカル俳優総勢36名が、ひとりひとりの映像をつなげて壮大な「民衆の歌」をつくりあげ、YouTubeで公開しています。たとえミュージカルの舞台ができなくても、ひとりひとりの俳優が横につながることで「列に」入り、「闘いの歌」をつくりあげてくれています。

 今の状況は、日々とてもつらいわけですが、そうであるからこそ、予想だにしなかった素敵なことも生み出されています。
 是非、聴いてみてくださいね。

https://www.youtube.com/watch?v=0Eax4cw6QFA&t=6s
「『思い』は必ず人々につながりをつくり、受け継がれ、それが次の希望をうみだしていく」