「グランドキャニオンに花弁を落とす」

 昨晩6月18日の夜7時から、小村俊平先生主宰の「生徒の学びと気づきを最大化するプロジェクト」の第3回報告会がWEB会議として行われました。コロナ臨時休業中の学びの経験の中でどんな成果を得て、それをこれからにどのようにつなげようとしているのかを考えることがテーマです。
 全国のたくさんの方々が視聴してくださるなか、セッション1(教員と生徒のペアが報告する)において、札幌市立藻岩高校、聖和学院中学・高校と並んで、蘇南高校の私と3年の石山さんがトップバッターの報告者になりました。
 石山さんは、「先生ありがとう」全校アルバムを呼びかけてくれた経験、そしてその手応えを文化祭の創造につなげていきたいという思いを語ってくれました。

 今の蘇南高校は、校長の強力なリーダーシップで動いているわけではありません。私も含めた教員間の対話の積み重ねによって、コロナ臨時休校を乗り越えようとする教育プログラムを構築してきました。そして、石山さんの語りを聞く中で、生徒の皆さんも友達同士の対話のなかで物事を考えていたことを知りました。
 石山さんは、バドミントン部の「One 蘇南!」動画に勇気づけられ、自分も何かをしたいと思ってアルバム制作を全校のみんなに呼びかけてみようと思いたったのだそうです。そしてそんな石山さん、全校の生徒の皆さんのことばに教員たちが励まされ、不安や疲れが吹き飛び、やっぱり前に進もうと思ったのでした。生徒と教員の対話です。

 このような教員間、生徒間、生徒・教員間の「対話による集合知」が、目の前の壁をのりこえていくときの最大の力になるのだとわかりました。
 COVID-19の困難な状況の中で、そんなてごたえをつかみ、それを未来にいかしたい。
 そんなことを石山さんと対話しながら報告としてまとめてみました。

 県内そして全国のたくさんの参加者の皆さんから、石山さん、そして蘇南高校への励ましの言葉をいただきました。本当にありがとうございました。心より御礼を申し上げます。

 最後に、臨時休校中に私が先生方に紹介した言葉について考えました。それは早逝した文化人類学者の保苅実さんが遺著の中でつぶやいた言葉です。

「書くということは、グランドキャニオンにバラの花弁を落とし、爆発を待っているようなものだ。」

 …この「書く」をいつも「教える」に置き換えていると、私は先生方に言ったのです。投げたボールが返ってくるかはわからない。でも投げ続けることが大切なのだという意味です。
 しかし、臨時休校の経験を通じて、何より蘇南高校の生徒たちとの出会いを通じて、こんなふうに言葉を言い換えたいと思うようになったのです。この言葉を、昨日の報告の結論にしました。

「教えるということは、グランドキャニオンにバラの花弁を落とし、それが地面にふれた音の響きに感動するようなものだ。」
「グランドキャニオンに花弁を落とす」