「北海道高等学校世界史研究会の大会で報告する」

 今日の午後は、北海道の先生方が企画したシンポジウムの報告者として登壇しました。
 「いつの間に札幌に?」と思われるでしょう。悲しいかな、WEB会議方式なので、南木曽の住宅から北海道とつながったのです。(トホホ…)もちろんメリットもあり、全国の先生方がアクセスできたので、南は沖縄まで、大学・高校の先生方と議論でき、得難い機会となりました。

 テーマは「生徒とともに語る世界史へ」。
 昨年出版された『〈世界史〉をいかに語るか』(岩波書店)の冒頭の鼎談メンバーである、長谷川貴彦さん(北海道大学)と成田龍一さん(前日本女子大学)、そして私がリレー方式で報告し、ウェビナーと対話をするという企画です。
 世界の知識人がコロナ禍をどのように分析しているかを論じた長谷川さん、コレラ・インフルエンザ・コロナという感染症の変遷を世界史の大きな変化に位置付けた成田さんの報告には、とても啓発されました。

 私は、現代歴史学・歴史教育が直面している課題をより鮮明化させたのが、コロナ禍であり、これを乗り越えようとする方策は、現代歴史学・歴史教育の新たな試みと通底しているという報告をしました。20世紀ソ連の思想家である(それゆえ生前にはほとんど評価されなかった)バフチンの「対話・ポリフォニー」の思想と歴史教育を交錯させてみました。

 思考・実践・対話の循環をいつも行っていきたいですし、思考・実践・対話いずれにおいても、生活地域・日本・世界を重層的に「場」として設定していきたいものです。

 私の報告にある「革命的チャンス」という物物しい生き方は、20世紀半ばにナチスに迫害されて死亡したベンヤミンに由来します。危機の中で既成の発想が動揺したとき、かえって物事の本質が見えてきて、希望に変わることがあると、ベンヤミンは遺言の断章のなかで書き残しました。ずっと心に残ってきた、この言葉の意味を、鮮明なリアリティとともにかみしめています。
「北海道高等学校世界史研究会の大会で報告する」