「振替休日は東山魁夷の絵画を」

 今日の本校は、振替休日でした。
 飯田の自宅から昼頃、天白住宅に戻ってくると、「おお」と思わず声をあげてしまいました。中央アルプスの峻厳な峰々が、純白の姿になっているではありませんか。純白のアルプスと、深い緑とパッチワークのように紅葉色が散らされた木曽の里山とのコントラストが美しい季節になりました。

 ここのところ休日の私は、ひたすら歴史研究の論文を書いています。もうとにかく、ひたすらです。この3週間で400字詰め換算50枚分くらいの文章を書きました。でもまだ3合目。今まで登ったことのない急斜面を必死に登っている気分です。

 夕方前、少し息抜きをしようと思い、岐阜県中津川市山口にある「東山魁夷心の旅路館」に行きました。住宅から車で15分ほどのところに東山魁夷の美術館があるのです。何という幸せ!
 東山は学生時代に木曽川に沿って北上し、テントに泊まりながら、御嶽山登山をしています。旅の途中、山口に来たときに激しい夕立にあって農家にかけこんだ彼は、その家で親切なもてなしを受け、木曽谷の人々の素朴な生活と自然の雄大さに心をうたれます。のちに風景画家として歩むことになる東山の大切な原体験だったと言います。

 今、開催中の展示企画は「旅――巡り合い」で、北欧やドイツの静謐な風景を描いた絵画や、鑑真和上が生まれ育った中国の山水風景を描いた絵画などと巡り合うことが出来ました。

 深くどこまでもつづく森が、透みきった湖の面にあざやかに映し出されている絵画を見ながら、この湖の面のような論文を、どうやったら書けるのだろうかと考えています。


「振替休日は東山魁夷の絵画を」