「総合研究のPBLで中学生の学習サポートを始めた生徒たち」

 本校では、総合的な探究(学習)の時間が、3年生の金曜日の4・5・6限に「総合研究」という名称で設置されています。もちろん1・2年次での「産業社会と人間」でも課題研究を進めていますから、探究学習にあてる時間は3年間を通じてかなり多いのです。
 この「総合研究」が、12月の課題研究発表会に向けて最後のラストスパートにかかっています。
 
 生徒たちは、社会の課題を何らかの実践によって解決しようとしているのですが、その取組が実に面白い。社会課題解決のプロジェクト型学習(PBL)を彼らなりに懸命に追求しているのです。

 たとえば、昨日から、南木曽中学校の3年生の朝の自習に「学習サポーター」として入った生徒がいます。伊藤さん、鈴木さんの二人は、コロナ臨時休校の際に県内公立高校がどのような対応をしたのかを聞き取り調査をし、本校の対応と比較しながら、これからの教育に必要な学習支援のあり方を考えました。
 次いで、公立中学のコロナ臨時休校で直面した教育課題についてインタビュー取材し、高校生としてコロナ臨時休校の経験から得たものを地元の中学生に還元できないかということを考えたのです。そして中学生の学習サポートを「対面」で行い、その経験をもとにオンラインでの学習サポートとしてどのようなことが可能かを考察していくというプロジェクトをたてました。
 二人は南木曽中学校の上田校長先生に、中学生の学習支援をさせていただけないかと直訴し、校長先生、学年の先生方の温かな応援をいただき、「学習サポーター」として任命していただいたわけなのです。二人は蘇南高校内でサポーターの輪を広げようと呼びかけています。
 まず初回は、2人だけで、南木曽中学を訪問しました。
 校長室で上田校長先生より「学習サポーター」の任命を受け、会場となる図書館に向かいます。なんと20名をこえる3年生が自習をしています。挨拶をして、「わからないところを聞いてください」と声がけをします。でもそこに大きな壁。中学生も初対面の高校生にすぐに質問なんてできるわけがありません。どの生徒にどのタイミングで声がけをして、教えてあげるのがよいのか。こちらからアクションをしてあげるのが大切だと二人は気づきます。

 私は二人の姿を見て、ふと気づいたことがあります。二人は、自分がうまく教えられるかドキドキしながら、中学生の質問に向き合っていました。中学生が「ここがわからない」と思うことについて、「わからないと思うのは当然だよね」という雰囲気がありました。そのことが学ぶ安心感をつくりだしていました。
 教員が子どもたちに教え込む時に「こんなこともわからないのか」という上から目線になりがちなものが、この二人にはありません。・・・ああ、メンターというのは、こういうことなのか、と私はあらためて再発見したような気がしました。

 二人は大学受験の直前です。本来は自分のことで精一杯なはずなのですが、それでも学習サポーターのPBLを全力でやろうとしています。
 こういう学びの姿勢こそ、未来にきっともっと大きな花を咲かせるのだろうと、私は二人を見守っています。

 そして学習サポーターの「下駄箱」(=承認された居場所)を用意してくださった南木曽中学校さんの優しさが、心にしみました。本当にありがとうございます。
「総合研究のPBLで中学生の学習サポートを始めた生徒たち」