「校長ラウンドテーブル・番外編」

 少しさかのぼっての報告になりますが、先週の12月2日(水)のWEB対話「生徒の気づきと学びを最大化するプロジェクト」(小村俊平さん主宰)は、「校長ラウンドテーブル」という企画で、3名の校長に「目指す学校像」についての短いスピーチをさせ、参加者がさまざまな質問をぶつけて対話を試みるという2時間でした。
 北海道札幌北高等学校長の林正憲先生と宮城県仙台第三高等学校長の佐々木克敬先生という、心から尊敬するお二人にまじって、長野県蘇南高等学校の小川がラウンドテーブルの画面に並んだ次第です。あとで気づいたことなのですが、3名に共通することは、道県立高校の校長なのですが、いずれも「立」が校名に入っていないことです。ちなみに長野県の場合は、大正9年の長野県令38号によって旧制中学校の名称が「長野県立~中学校」から「長野県~中学校」に一斉に改称されて、現在に受け継がれています。あえて「立」がないということの意味を様々な大先輩たちが熱く語るのを、初任の頃から私は聞いてきました。
 実は、3人で自己紹介をしましょうとメールの交換を始めたら、すでに本番前にかなりな量の資料とメッセージがとびかう盛り上がりになり、私は本番前にすでに大満足していたのでした。林先生、佐々木先生の熱量の迫力に圧倒されていたと言った方がよいのかもしれません。

 WEB対話でも少しふれられていましたが、お二人の現任校での教育理念の根底には、それぞれの教師生命をかけた原体験があることを私はひしひしと感じました。林先生の地域高校のたてなおしや佐々木先生の被災地の高校における新たな試みには、その高校をこえた普遍性が宿っています。
 私の分科会では、私が2校目で体験した「松本サリン事件」をめぐって様々な関係者と対話をかさね、そのなかから教育実践を自分なりに探究したことが、今の自分につながっているのかもしれないということを報告しました。「第一通報者」でありながら冤罪をきせられて、それでも毅然として歩んでおられた河野さん一家、サリン事件の意味を必死に考えようとした生徒たち、記憶を未来につなごうとする坂本弁護士事件のご遺族…そうした人々とともにあの頃の私の日々はありました。

 自分の目指す学校像の核には、生徒と教師がともに「探究者」であるという目標があります。「松本サリン事件」をくぐりぬけて自分の人生を「探究した」人々の思い出が、いつも私の根底にあるのだとあらためて思いました。
 いつか、本校の生徒にもあの頃のことをじっくり話してみたいと考えています。

「校長ラウンドテーブル・番外編」