「生徒たちの課題研究で麓の集落からの避難路をつくる」

 蘇南高校は木曽川の右岸の高台にあるため、ふもとの沼田地区(ここには南木曽中学や町の体育館もあります)の避難所になっています。ところが、沼田地区から蘇南高校に車道で来るためには、二か所、伊勢小屋沢を渡らなければなりません。かつてこの沢では大土石流が発生し、尊い人命が奪われた歴史があります。

 本校の3年生の澤渡さん、戸前さん、古川さんは、防災で見落とされていることを探究テーマにしています。彼らとの対話のなかで、私が人から聞いた話として、かつて沼田地区から本校への避難路があったらしいと話題に出したところ、数日後、彼らは、藪に覆われた道を見つけ出し、動画撮影をしながら、その急斜面の道を沼田地区まで下りてみたのでした。もちろん担当の今井先生が付き添ってです。
 彼らが校長室で言うには、「あそこ、むりですよ。迷うし、滑落しそうになるし! 実際、滑落しましたもん!」

 彼らが行動したからには、私も行くしかないと、校用技師さんと別の日に下ってみると、確かに荒廃してはいるが、昔の山道の形跡があります。「復旧できそうな気がするよ」と、今井先生に伝えると、「彼ら、作業すると乗り気です」とすぐさまの返答。
 ならば、梅雨入りの前にやったほうがいいと、本日の放課後、避難路の整備を実施しました。

 この過程で山道の一帯は民有地であることが判明し、町教育委員会が仲介していただき、地主様に快く許可をいただきました。高校生のボランティアへの温かなエールをいただいたのだと思います。

 今日は、生徒たちが危険個所や道迷いが心配な箇所に杭を打ち、トラロープをはり、みちしるべに蛍光テープをたらし、落ち葉を除去しました。一番上の雨でえぐれて大きな段差になっている個所は、校用技師さんが町有地に迂回する形でスモールステップの階段を作ってくれました。(さすがにこれは前日の作業。)1時間半あまりの作業で、見事に麓から学校までの避難専用山道の完成です。

 むりだと思っていたことが、みんなで協力し合えば実現する。それに気づけたことが大きな収穫だった、と生徒たちは語っていました。
 それってボランティアの醍醐味だと私は思います。経験したからこそわかること。
 この避難路が使われないことが望ましいのですが、万一のためのセーフティネットを探究学習の一環として作ってみた、すがすがしい夕方でした。
「生徒たちの課題研究で麓の集落からの避難路をつくる」