「感染症の歴史と、歴史における選択肢を考える」

 今日は、私が会長をつとめている長野県高校歴史教育研究会の夏季研究会をオンラインで開催しました。長野県内の高校の先生方だけでなく、全国の先生方にも参加していただき、濃密な4時間を過ごしました。

 内容は講演2本と実践報告1本です。
 まず、青山学院大学教授の飯島渉先生に、感染症の歴史を高校の歴史教育で学ぶ方法と事例について講演をいただきました。感染症がどのように広まり、どのように征圧されていったかということを、スペイン風邪のような世界的流行をした感染症だけでなく、日本住血吸虫症とかマラリア、フィラリアといった風土病から考えてみることの大切さを考えました。

 実践報告では、小海高校の山宮先生が、生徒が身についた資質を実感できるような評価の工夫を発表してくれました。評価を工夫することで、授業を知識の詰め込み主義から生徒の資質重視主義へ転換させた、素敵な実践でした。

 最後に、東京大学名誉教授の油井大三郎先生が、アジア・太平洋戦争の歴史を宿命的な道のように教えるのではなく、いくつかの選択肢があったにもかかわらず戦争に陥った歴史であると教えるための観点について講演をしてくださいました。
 特に、「世界史」が第一次世界大戦後の国際政治の転換(植民地の民族自決を無視できなくなった新外交の登場)を見つめるのに対し、「日本史」が従来の弱肉強食の旧外交が継続していたかのように歴史を語りがちであることを油井先生は問題視し、「世界史」と「日本史」を統合的な視点から見つめ直すことを説かれました。
 来年度から日本の中等教育史上初めて、世界史と日本史を統合した「歴史総合」という科目が始まります。その意義について深く考える機会になりました。

 研究会の後、希望者だけがオンライン上に残って「振り返りの会」を行いました。今日の研究会に参加しての気づきを交流しあったのです。これもまた、充実した「余韻」を味わうひとときでした。
「感染症の歴史と、歴史における選択肢を考える」