雑誌『図書』にエッセイを発表しました

 岩波書店の雑誌『図書』2021年10月号に、「ヴァルター・ベンヤミン」というタイトルのエッセイを発表します。本屋に並ぶ前に、出版社から刷り上がった雑誌が送られてきました。
 『岩波講座世界歴史』が10月から刊行されることにあわせて、編集委員が交代しながら「人物から見た世界歴史」というリレー連載を『図書』誌上で始めます。その第一回が、私の担当です。

 私が取り上げたのは、ドイツの思想家ベンヤミン(1892~1940)です。ベンヤミンは独創的なスタイルでドイツの思想史や現代文化のありようを分析し、ついに大学の研究者のポストにつけず、ユダヤ系であるがゆえにナチス・ドイツに迫害され、最後は亡命の旅の途上で自死しました。といっても、ベンヤミンの生涯を描くことは多くの研究者がやっていますから、私はベンヤミンの遺作「歴史哲学テーゼ」を高校の教室でどう読んできたかということを書きました。(高校の歴史の授業で、難解なベンヤミンの文章を読むということは、あまりないことだと思われます。)

 松本サリン事件の翌年、まだ実行犯が逮捕されていないなかで、私は松本深志高校に赴任して、「危機の時代」に歴史を考えることの意味を問うことになりました。事件の「第一通報者」でありながら「犯人」と疑われた河野さんご一家との出会い、生徒たちとの図書館ゼミナール活動を重ねる中で、私はベンヤミンの思想を「自分事」として考えてきました。その日々を今回のエッセイで振り返ってみました。
 『図書』の最後のページにある「こぼればなし」(編集部便り)でも私のエッセイに言及していただいています。もし機会がありましたら、お読みいただけたら幸いです。

雑誌『図書』にエッセイを発表しました