「失明しても絵を描き続けた画家のメッセージ」

 今日は、2年生の「産業社会と人間」の授業で、校長講話をしました。2年生の高校生活が折り返し地点に立ったことを確認して、後半の学びを展望するキャリア・ガイダンスです。

 冒頭で、私自身が昔お会いしたことがある、エム ナマエさん(1948~2019)のことを話しました。ナマエさんは、38歳の時に腎臓疾患のために失明し、作家への転身をはかりますが、ある出来事をきっかけに再び絵を描き始めます。
 「自分がナマエさんの立場になったとして、どうやって絵を描きますか」と生徒たちに考えてもらいました。これまでの記憶と想像力で描くという回答がほとんどで、確かにそうなのですが、具体的な方法にはふれられていません。でもなかには「触覚でわかる強い筆圧の描線をかいて、そのあとで彩色する」とナマエさんの方法を言い当てた生徒が、ちゃんと出てきます。
 「それに加えて絶対音感ならぬ絶対色感が、パステルの彩色を支えていたんだろうね。」と私が続けます。

 ナマエさんは、作品集『いつか誰でも』の「まえがき」でこう書いています。
――全盲のぼくを画家に復活させた本当の力。それがどんな力なのか、ぼくにはわかりません。ただ、ときどきこう考えることがあります。その力とは、ぼくをこの世界に誕生させたのと、同じ力ではないのかと。
 ナマエさんの言う「力」とは、ある人は「神の力」と考えるかもしれませんし、別の人は「いのちの力」と考えるかもしれません。いずれにせよ、何かの「力」が、私たちにはあるのではないかと思うのです。
 
 生徒たちから様々な質問をもらい、また感想について生徒が意見発表をしてくれました。
 生徒の皆さんの高校生活の後半が、「いのちの奥深さ」を予感する経験と学びを重ねてくれることを、私は心から願っています。

「失明しても絵を描き続けた画家のメッセージ」