「グレタ・トゥーンベリさんの素顔をドキュメンタリーで知る」

 昨日、塩尻の東座で素敵なドキュメンタリー映画をみました。
 「グレタ ひとりぼっちの挑戦」(ネイサン・グロスマン監督・脚本、2020年、スウェーデン)というドキュメンタリー映画です。
 15歳のスウェーデンの中学生が、気候変動に抜本的な手を打たない政治家たちを批判して、学校ストライキに入ります。その輪が次第に広がり、南極大陸以外のすべての大陸で、気候変動の危機を訴える巨大なデモのうねりにつながっていきました。

 正直に言うと、グレタさんを持ち上げる世間の風潮に私は懐疑的でした。グレタさんは「偶像」のように利用されているだけなのではないかと。一方で、世界の保守派からは「アスペルガー症候群という発達障害をもった少女」の過激な言動にすぎないと、強い批判も寄せられてきました。
 
 しかし、この映画は、まさにたったひとりで国会議事堂前に座り込んでストライキを始めたグレタさんの「行動の始まり」から次第に世界の注目を集めていくまでの道のりを、グレタさんの傍らにカメラをおいて静かに寄り添っていきます。もともと1~2日の取材をする気軽な思いで始めたグロスマンの撮影は、グレタさんの生き方に心を動かされ、一年以上もグレタさんを追いかけることになりました。

 世間で「自閉症スペクトラム」とされる個性をもった彼女は、気候変動の危機をごまかさずに正面から受け止める感性をもった人でした。(発達障がいと言われているものは、すぐれた感性でもあるのです。)気候変動について学校で学んだ彼女は、衝撃から1年以上も学校に通えなくなります。その間、緘黙の状態であったとも言います。ようやくに彼女は、座り込みストライキという形で行動を始め、周囲の人々とのコミュニケーションを始めます。同時に、自分を都合の良いところで使って、実際のところは経済成長を優先して気候変動への抜本的対策をとろうとしない政治家たちへの失望を重ねていきます。それでも彼女は、世界の人々と繋がって行動することを続けていくのでした。
 映画は、そんな彼女の苦悩に満ちた成長を、静かに描いていきます。

 映画の最後は、ニューヨークの国連本部でスピーチをするために、飛行機を拒否してヨットで大西洋を横断するグレタさんの命がけの行動が映し出されます。その純粋なひたむきさを見て、私は涙を禁じえませんでした。

「グレタ・トゥーンベリさんの素顔をドキュメンタリーで知る」