「ステンレス製の鍋と透明なクラゲに魅せられて」

 玄関ロビーに展示している美術部の生徒たちの作品を紹介する続編です。同じく県展に出品した二人の生徒の作品についてとりあげたいと思います。
 
 3年の平尾さんの「キッチン用具の集まり」は、キャンバスにアクリル絵の具で描かれた作品です。作品には作者の次のような言葉が添えられています。
――ステンレス製の鍋とやかんは金属らしい光沢が出るよう、様々な色を何回も重ねました。金属らしい光沢は遠くからの方が感じられるので是非見てみてください。
 とても面白い作品です。作者がこだわった金属の光沢は、まるで透き通った湖の水面のようです。身近な日用品が深い美しさをたたえることができるのは、まさにアートの力です。
「ステンレス製の鍋と透明なクラゲに魅せられて」


 
 もうひとり、3年の南山さんの「夜に沈む月明かり」は、やはりキャンバスにアクリル絵の具で描かれた作品です。作者の言葉を聞きましょう。
――クラゲの触手が、海に浮いているようにするため、薄い色で何度も重ね塗りをしました。
 これもとても個性豊かな作品です。本来は、海のなかの小さな生命体クラゲが、ここではまるで宇宙をただよう壮大な生命の源であるかのように見えてきます。作者がこだわった透明感それ自体が、万物を包み込む大きさに見えてきます。
「ステンレス製の鍋と透明なクラゲに魅せられて」

 アートって、本当に面白いですね。
 生徒たちの作品を見つめながら、私はいくらでもエッセイが書けそうです。