「地方のまなざしからSDGsを考える」

 北海道新聞社の関口裕士編集委員が『北海道でSDGs』(北海道新聞社)を出版されました。これまで北海道新聞のなかで多彩なゲストに取材した記事を1冊の書物にまとめたものです。見開き2ページで完結する記事が、17のSDGsの目標ごとに整理されています。
 これがとても面白く、ひきこまれて読みふけりました。

 たとえば、冒頭では、いきなり斎藤幸平氏(ベストセラー『人新世の資本論』で「SDGsはアヘン」と書いた思想史学者)と女子高校生二人が座談して、彼女たちがSDGsの効用を説いて斎藤氏に反論します。それに対する斎藤氏のリプライも大切なところをついている。
 SDGsをめぐる政治・外交・ビジネス…多様なアクターが登場して、未来のために何を努力しているかを語っており、そのなかに「北海道」という地方の視点を交錯させています。
 さらにはSDGsには核問題・原発問題がないこと、民主主義についてもないこと、さらには少子高齢化対策がないことの理由を考え、対処法を議論しています。SDGsの限界をきちんと見つめているのです。

 最後に北海道でSDGs活動を牽引してきた二人の方と関口さんが鼎談をしています。SDGsにおける「持続可能な社会」と「経済成長」の矛盾を見つめつつ、また、北海道の歴史を振り返りつつ「脱植民地化」という大きな世界史の流れのなかでSDGsを考えています。
 私のように北海道の市民でなくとも、たくさんのことを考えさせられた、優れたSDGs論でした。…でも北海道の先生たちは、こんなにいいテキストができて、羨ましいなあ。
「地方のまなざしからSDGsを考える」