「奇跡のような窯変がうまれたドラマを作家に夢中に質問する」

 まず、ここのところの持病(尿管結石)の問題について温かなお言葉をたくさんの方々からいただき、本当にありがとうございました。おかげさまで今日出張を控えて校内で仕事をしていたところ、結石が身体の外に出たので、これで回復すると思います。(治る瞬間がわかる病気というのも珍しいですね。)

 出張をとりやめて、とてもいいことがありました。
 実は、本校の今の校舎が完成した1988年のことですが、前庭にブロンズ像が置かれました。本校OBの彫刻家・勝野眞言先生が第17回日本彫刻会展で日彫賞を受賞された作品「律」です。勝野先生は、2019年の日展彫刻の部で文部科学大臣賞を受賞され、熊本の崇城大学芸術学部長としても活躍されています。その勝野先生が、ぶらりと蘇南高校を訪ねてきてくださいました。

 前庭の「律」は、自分を律しようとしたときの「戸惑いや不安のまざった内省」を見事に表現した作品だと私は見てきました。単純な希望の表現ではなく、陰影をまじえた希望の表現であることが、蘇南高校のキャンパスの宝物なのです。
「奇跡のような窯変がうまれたドラマを作家に夢中に質問する」



 先生は熊本で白磁の人物像を造形されておられます。フィンランドなどで展示されてきた作品のカタログを拝見しながら、勝野先生と芸術についての対話をひとしきり夢中になってさせていただきました。
 白磁の作品は、窯のなかで焼くさいの方法を多様に工夫していくことで、神の恩寵としか言いようのない色合い・フォルムの窯変が生まれます。その奇跡のような窯変がうまれたドラマを、私は勝野先生に夢中になって聞き出していました。

 いつか私も作品とじかに対面したいと強く思います。そしていつか生徒たちにも対面できる機会があればいいのにと、夢を抱きました。
 南木曽町をはじめとする世界の人々が、この地で生まれ育った芸術家の作品をこの地で感じることが出来たら、どんなに幸せなことだろうかと、また私の夢がひとつできました。

 勝野先生、本当にありがとうございました。
「奇跡のような窯変がうまれたドラマを作家に夢中に質問する」