「『岩波講座世界歴史』の第11巻を出版します」

 このたび岩波書店から『岩波講座世界歴史11 構造化される世界――14~19世紀』を刊行しました。
 全24巻のうち、私が責任編集を担当したのが第1巻と、この第11巻になります。東京大学の島田竜登先生に編集協力という形で多大なご協力をいただきました。
 タイトルにあるように時間軸をモンゴル帝国から帝国主義の時代までの600年という長大なスパンにし、空間軸を地球全体に広げて、「近世の世界史」のなかに「世界の構造」をどのように見出していくのかということを考察しました。

 私は編集に徹したので文章は書いていないのですが、力作揃いの内容になっていると思っています。

(内容の一部、敬称略)
・島田竜登「構造化される世界」
・山下範久「14~19世紀におけるパワーポリティクス」
・守川知子「宗派化する世界」
・ルシオ・デ・ソウザ/岡美穂子「奴隷たちの世界史」
・山崎岳「アジア海域における近世的国際秩序の形成」
・関哲行「近世スペインのユダヤ人とコンベルソ」
・小林和夫「商品連鎖のなかの西アフリカ」
・大橋厚子「東南アジアにおける植民地型政府投資の光と影」
・永島剛「感染症・検疫・国際社会」
・矢部正明「グローバル・ヒストリーと歴史教育」
・ほかにコラム(林裕文「東北地方のグローカル・ヒストリーとしての歴史実践」など)

 たとえば、600年にわたる近世グローバル・ヒストリーの分析視点の提示(島田論文)、オスマン朝とサファヴィー朝の抗争と徳川政権の宗教政策の比較(守川論文)、奴隷たちの世界史の提示――そのなかで、たとえば、日本の戦国時代に捕虜となった人々が奴隷として売却されリスボンやメキシコシティなどで生きたことの実証(ソウザ/岡論文)、オランダがジャワでおこなった強制栽培制度を植民地型政府投資としてとらえて各国の公共政策との比較の視座をつくる(大橋論文)、高校のグローバル・ヒストリーの変遷の分析(矢部論文)、東北地方の近世と世界に連関を題材にした授業実践(林コラム)など、高校の歴史教育にかかわる方々にとっても、きっと大きな学びが得られるはずです。

 スケールの大きな論文を書くために、それぞれの執筆者が多大なエネルギーを注いできました。私自身もかなりの時間をかけて編集してきました。
 いつでも本を刊行するときは、大きな緊張感に包まれています。
「『岩波講座世界歴史』の第11巻を出版します」