「大学入学共通テストの世界史Bの問題を批評する」

Posted by 蘇南高等学校長. 2022年01月17日15:31
 大学入学共通テストを本校の生徒たちは無事に受験することができました。これから2次試験に向けてさらに前進できるよう、応援していきたいと思います。

 私の専門の「世界史B」を解いてみました。(自己採点100点。当たり前か。)問題のあり方について、批評をしてみたいと思います。

(1)単なる暗記の再現の問題が増え、歴史的思考を問う問題が少なくなったのは、残念なことでした。入試改革について、世界史はやや足踏み状態であるように思いました。
(2)そのようななかでも、第4問の問3「日本の戦時体制をファシズムと言うか、言わないか」について論拠を示して考えさせる問題は、新時代の予感を感じさせるものです。同じく問6のエイゼンシュタインの映画が上映禁止になった理由を、当時のソ連の歴史から推測させる問題も、歴史解釈を問う良問です。
(3)第4問の質が良かったですが、息子を殺害したイヴァン4世の絵画を試験に掲載するのはいかがなものかと思いました。高校生には様々な事情を抱えた子がいるのです。
(4)反対に史料を十分にいかしきれていない問題が多く、残念でした。第2問の問4が、長々と史料を読ませながら、文中の「マクミラン」の国を知っているかどうかで正解が決まる(あるいは史料と関係なくフランスの核開発の時期を暗記しているかどうかで決まる)というところなど、史料問題の活かし方の方向性が違うのではないかと思います。第3問のBの世界の各地域の人口の推移の表はとても面白いのですが、問いになると、普通の暗記か、表の単純な読み取りで正解が決まってきます。
(5)あまり些末な暗記を問う問題がほとんどなかったことには、拍手です。

 もちろん作問をされた方々には多大なご労苦があったろうと拝察しますし、正確に正誤を問うのを第一にしたことと思います。そのことに深い敬意を表しつつ、歴史的思考力を問う問題とは何かということを、私たちは一層研究していく必要があると思ったのでした。