「木のお椀の保温性を実験で証明しようとしたら…」

Posted by 蘇南高等学校長. 2020年12月09日19:09
 今週の金曜日は、「第10回総合研究発表会」。3年生の「総合研究」(総合的な学習の時間)の成果発表会です。コロナ対策としてオンライン配信方式という新しいやり方で実施します。
 その予告として一つの班の研究内容を紹介します。

 南木曽の代表的な特産品に、木を回転させて削り、美しいお椀やお皿を創作する「ろくろ工芸」があります。妻籠宿から下伊那の昼神温泉に向かう清内路峠の中腹にある広瀬地区は、代表的な木地師(きじし)の里です。
 本校の大畑さん、上村さんは、その「ろくろ工芸」の魅力をインタビュー取材しながら調べていくうちに、「すぐれた保温性がある」と言い伝えられてきた製品の性能を「科学実験で証明して魅力的なセールストークを開発しよう」という課題を設定しました。かくして、セラミック、ステンレス、プラスチックなどの容器と材質別のろくろ工芸品が並べられ、熱湯が時間を経過していくうちにどのように冷めていくか(保温されていくか)という科学実験が始まりました。
 実験を重ねるうちに彼女たちは、大いに困惑しました。10分後、20分後の温度の下がり方は、「ろくろ工芸品」と他の容器にあまり違いがなさそうだということがわかってきたのです。むしろ2分後の下がり方は、「ろくろ工芸品」のほうが急降下(!)といってもよい。

 あらためて考えると、①木のお椀は急に温度が低下して、その後、緩やかに下がる。これはやけどをせずに快適な温度で汁物を楽しめる性能と言える。➁木のお椀は液体の温度に対して手の感触に熱さを感じないので、相対的に保温性を感じるのではないか。…という結論を導き出しました。南木曽「ろくろ工芸品」の新たなセールストークの誕生ではないでしょうか。
 私は、探究することで思いもかけないようなことに出会った彼女たちの研究に、探究することの面白さを心から感じています。