「東日本大震災と今をむすぶ特別授業をおこなう」

Posted by 蘇南高等学校長. 2021年12月15日14:20
 今日は、念願のゲストをお迎えして特別授業を全校で学びました。
 講師は、福島県在住の木村紀夫さんです。木村さんは2011年の東日本大震災で父・妻・次女を失い、長女と白馬村に避難するも、いまだ見つかっていない次女・汐凪(ゆうな)さんを探してふるさとの大熊町に通い続けました。汐凪さんの遺骨の一部が発見されたのは、ようやく2016年のこと。

 今日の授業は、「ふるさと探究学・特別編」を題し、今の日本社会の中で「ふるさと」を失ってしまった人々の声を聞き、自分たちの生き方を考えるという学びを行いました。
 「ふるさとを大切にしよう」という学びを普段の蘇南高校はしています。ならば、その「ふるさと」を喪失してしまった人々が、今、どのような思いで、どのように生きているかを知るべきなのだと考えました。

 木村さんは、汐凪さんが学んでいた小学校、お父様と汐凪さんが津波にさらわれたであろう海岸、自宅跡などをめぐり、その風景を2時間にわたって実況中継しながら、現地から蘇南高校生に授業をおこなってくださいました。
 1000年後の「いのち」を守るために、今の私たちは何をすべきなのか。生活の豊かさとは何なのか、防災意識とはどのようなものなのか。とても大切な問いを木村さんから投げかけていただきました。
 そして何より、未来の「いのち」を守りたいという木村さんのやさしさが、オンラインであることをのりこえて、こちらにひしひしと伝わってきました。

 問いについて生徒同士で対話をして、いくつかの応答を木村さんにお返ししました。
 そして最後に生徒代表としてあいさつをしたのは、東日本大震災によって信州に避難し、現在、蘇南高校で学んでいる、ひとりの女子生徒でした。福島出身であることを友人に言ったことがなかった彼女が、勇気を出して生徒代表として木村さんにお礼を述べたのでした。

 「ふるさと」とは、自分の生き方を考える足場です。「ふるさと」は木曽・中津川であり、福島であり、地球でもあります。
 自分の後に続く人々に「ふるさと」を残すために、私たちはどう生きるべきなのか。問い続けていきたいと思います。
 木村紀夫さん、本当にありがとうございました。