「いくつもの曲がり角を通って進んでいく」

Posted by 蘇南高等学校長. 2020年07月10日18:33
 本日、7月10日(金)に学校が4日ぶりに再開できました。JR中央西線の北からの8時電(最も多くの生徒が利用する便)が車両のやりくりがつかず運休になってしまったので、1・2時限をカットして10時50分からのSHRです。

 SHRは5分時間を伸ばし、全クラスで担任から、木曽谷の蛇抜け(土石流)の歴史とその予兆を察知するための教訓、厳しい自然環境は恵みでもあり優れたヒノキを育んできたことなどを伝えました。
 そして今日の信濃毎日新聞1面や市民タイムス木曽版で大きく報じられた、南木曽の2014年の土石流で亡くなった榑沼さん(当時中学1年生)のいのちを胸に刻んで役場職員として奮闘している本校卒業生のことを紹介しました。
 この卒業生Hさんは、「自分も町に残る。(榑沼さんと)一緒に生きていこうと思う」と語っていると、信毎は報じています。そして、市民タイムスは、「命の尊さを知っている人間として、町のために、町民のことを考えて仕事をしていきたい」というHさんの言葉を伝えています。榑沼さんは今もHさんのなかで(そして多くの人々の心の中で)生きている。
 目がしらがあつくなる記事です。

 Hさんの後輩たちは、授業を終えて、来週の文化祭準備に懸命に取り組んでいます。厳しい自然環境だからこそ、ゆっくり時間をかけてまっすぐに優れたヒノキが育つという摂理は、高校生も同じかもしれません。
 厳しい時代だとしても、試行錯誤しながら、いくつもの曲がり角を通って進んでいくことによって、まっすぐな心が形作られていくのかもしれない。
 蘇南生の姿を見て、そんなことを考えています。
  


「臨時休校3.5日め、オンラインHRを始めました」

Posted by 蘇南高等学校長. 2020年07月09日17:51
 本日、7月9日(木)についてもJR中央西線が塩尻・南木曽間で運転を見合わせていることから、臨時休校としました。6日(月)の14時の授業打ち切りから、3.5日も臨時休校が続いています。
 蘇峡祭まで1週間を切ったことから、生徒会の準備、校内展示のための各自の研究発表が進められなくなっており、生徒の皆さんも不安でいっぱいであることと思います。当然ながら、この間の授業が進んでいないということについての不安も大きいでしょう。

 今日は、朝の職員会でオンライン教育を開始することを確認し、急ピッチで準備を進め、11:00からZoomホームルームを行いました。画面に続々と並んだ生徒の皆さんと担任が三日ぶりの対面です。「元気でしたか?」「学校に行きたいです」といった言葉が温かくかわされました。

 その後、家庭学習で進めてほしいことの課題の指示を担当から行いました。本日の課題が、各学年の各系列で揃うよう、調整をして考えました。Classiを全員が導入しているので、それを活用して「学びを止めない」よう、呼びかけました。コロナ休業からようやくあけて生活リズムが整ってきたところに、またもやの休業…。
 でも起こってしまったことは仕方ないので、あとはこれを今自分が持っている知識・経験を総動員してのりきる(ブリコラージュする)しかありません。

 「えっ、これやるの?」ではなく、「今回もできるでしょう」と言えるのは、前回の経験があったからです。確実に私たちの「ブリコラージュする力」はアップしているのです。

 万万が一、明日も臨時休校になってしまったら…と考え、次なるZoomHRと授業は準備しました。
 でもやっぱり学校再開が一番です。JR東海さんも必死に運転再開に向けた努力をしてくださっていることでしょう。

 学校再開の日を楽しみにしながら、生徒の皆さん、一緒に歩んでいきましょう!
  


「特別警報の朝をのりこえて」

Posted by 蘇南高等学校長. 2020年07月08日16:00
 今朝は、最高の危機レベルである特別警報が出されました。南木曽は明け方から激しい風雨が続いていましたが、6時半を回ったころから嵐とでも言うかのような猛烈な風雨になりました。すでに昨晩のうちに臨時休校の連絡はしていましたが、あらためて特別警報の連絡をオクレンジャーにて流し、先生方にも無理な出勤をしないように呼びかけました。
 木曽川もどんどん水かさが増し、雨がやんでも王滝村の牧尾ダムの放流が続いたことから水かさが増し続け、氾濫危険水域を越えました。木曽川は大岩が流れてぶつかる大きな音が響き渡っていました。
 橋が通行禁止になると本校は陸の孤島になってしまうので、校内にいた先生方にも職員住宅以外の方には帰っていただきました。
 指定場所に避難した生徒は10名、職員が7名。
 今のところ本校の周辺では氾濫、土砂崩れなどの被害の情報はありません。

 生徒・保護者の皆さん、教職員の皆さんは、引き続き警戒しながら過ごしていただきたいと思います。明日のことは、あらためて本日夜にオクレンジャーにてお知らせします。

 梅雨前線停滞の豪雨による「蛇抜け」(土石流)の悲劇が繰り返されてきたのが、南木曽の歴史です。
 蘇南高校が発足した1953年7月20日にも、まさに足元の伊勢小屋沢で「蛇抜け」がおこり、3人が犠牲になりました。本校の通学路の途中にある大岩の上の「悲しめる乙女の像」は、その悲劇を心に刻むために建立されたものです。当時、沢の近くには3軒の教員住宅がありました。犠牲になったのは読書中学校の太田校長の幼子2名(ついに発見されず)と教諭の奥様でした。「悲しめる乙女の像」の中には由来の文字を一つずつ記した小石262個と般若心経を記した小石260個が納められたとのこと。
 「白い雨が降るとぬける」「雨に風が加わるとあぶない」「長く雨が降り続いて水が急に止まったらぬける」「蛇抜けの前にはきなくさい臭いがする」…こうした先人からの言い伝えを、太田校長は教訓として土台の石に刻みました。

 今朝は「白い雨」「風が加わる」という2条件がそろっていたので、本校では山側についても警戒を続けていました。

 一方で、傾斜が厳しい地形と多雨で寒さが厳しい気候によって樹木がゆっくり育ち、日本有数の良質のヒノキを育んできたと言われています。
 自然の大きな脅威は大きな恵みでもあります。そんな自然のありようを、学校が再開されたら是非、生徒の皆さんと考えてみたいと思っています。
  


「南木曽で『いのち』を守るために」

Posted by 蘇南高等学校長. 2020年07月07日21:45
 蘇南高校は、明日、7月8日(水)もやむなく臨時休校をします。深刻な大雨の予報が出されており、JR東海が夕方までの運転取りやめを発表しています。生徒・保護者の皆さんには19時頃にオクレンジャーにて臨時休校のお知らせをしました。
 文化祭を前にして、そしてコロナ臨時休校から学校を再開してようやく生活リズムが整ってきたところの休校は、断腸の思いです。

 学校を臨時休校にすべきかどうか、私たちが判断する指標は、JRの運行状況だけではありません。気象庁の警報、累加雨量、木曽川の水量、雨雲レーダーなどなどいくつもの指標をチェックして総合的に判断しています。もちろん県教育委員会、町教育委員会、隣の木曽青峰高校などと相談もしています。
 難しいのは、長野県の防災情報に、木曽川の洪水予測に関する情報がきわめて乏しいことです。今までの行政のいきさつがあるのでしょうが、長野県河川砂防情報ステーションのHPをみても、木曽川の流量に決定的な影響を与える、王滝村の牧尾ダムの様子がわからない。そこで別のHPを開き直し、牧尾ダムの動向を別途監視します。毎秒300tとか600tといった規模になる牧尾ダムの放出量によって、蘇南高校直下の木曽川の流量は決定的な影響を受けるからです。

 ちょうど今、牧尾ダムからの大量放流によって、南木曽の木曽川河畔の地域に避難勧告が出ました。牧尾ダムの放出量を調べると毎秒900tに及んでいます。
 すぐに職員住宅の先生方にも避難をよびかけました。
 「いのち」を守るために最善を尽くす所存です。
  


「本日は臨時休校します」

Posted by 蘇南高等学校長. 2020年07月07日07:28
 朝7時前にオクレンジャーで連絡しましたが、本日7月7日(火)は、JR東海が昼頃まで運転見合わせになること、大雨警報・洪水警報が継続していることから、臨時休校とします。

 昨晩は、避難勧告の出た地域に住む教職員も避難して一夜を明かしました。
 生徒の皆さんの中にも避難所で不安な夜を過ごした人がいることと思います。避難した人は、担任または学校に連絡をしてください。

 木曽川の水位は昨日よりは下がっています。
 ただし梅雨前線の活発な動きは続いていますので、引き続き最大限の警戒をしていきます。
  


「木曽川の水位が上昇しています」

Posted by 蘇南高等学校長. 2020年07月06日18:36
 南木曽は激しい風雨が続いています。
 本校は、14時で授業を打ち切り、一斉下校の措置をとりました。

 18時前に木曽川が氾濫危険水位に達しました。蘇南高校に通じる三留野大橋の下を、木曽川の濁流が激しく渦巻き、大木が大きな音をたてて流されていきます。

 明日の朝ですが、生徒の皆さんは、自宅待機(または避難所での待機)をしてください。学校再開の可否を朝7時頃、オクレンジャーにて連絡します。

 「いのち」を守ることを最優先にしてください。
 どうか、生徒・保護者・教職員の皆さんが、元気に再会できますように!!
  


「夢はいくつもあっていい」

Posted by 蘇南高等学校長. 2020年07月03日22:21
 この時期は、木曽郡内の中学校の3年生に進路講話をしています。例年は教頭がまわっているのですが、今年は私が直接、中3生と会いたくて、すべての中学校をまわることにしました。近くの南木曽中学校、大桑中学校、そして上松中学校、木曽町中学校をすでにまわっています。

 今日は、朝一番に王滝中学校を訪問して進路講話をしました。
 王滝村は、伯母夫婦が住んでいたのと、御嶽山の登山を毎年のように重ねてきた関係で、実は頻繁に訪ねてきた土地です。王滝中の生徒さんにキャリアデザインの話をすることがとても楽しみでしたし、講話をした後も充実感でいっぱいになりました。

 普通、進路講話というと自分の高校の紹介に終始するのですが、「キャリアデザイン」とはどういうことだろうかという話が半分以上です。
 夢というものは、ひとつにしぼれるものではないし、夢を実現するということは「その仕事に就く」以外のもっと多様な姿があるはずなのです。将来の夢を定めて、そこに向かって努力して……なんて単純なものではない。

 夢はいくつもあっていいものだし、その夢をとおして誰かの幸せに貢献できればいいのだから、豊かに夢をもとうよ。そして、ジェネラリストでありつつスペシャリストであるような生き方ができればいいね。…そんなことを生徒の皆さんに語りかけました。
 僕は中学生の頃、映画評論家・俳優・作家・学者など、いろんなものになりたかった。いずれも職業としては違うけれど、今やっていることは、そうした夢に近いことをやっているんだよ。…人生というのは、そういうものじゃないのかな。

 一緒に蘇南高校でキャリアデザインを考えませんか?

 写真は、始業前に中学校の裏山の御嶽神社里宮を訪ねたときのもの。苔むした階段が無限に続いています。何歳になっても、たくさんの夢を持って、階段をのぼっていきたいと思います。
  


「かかわらなければ この愛しさを知るすべはなかった」

Posted by 蘇南高等学校長. 2020年07月01日22:01
 先週の木曜日、金曜日と2日続けて、1学年PTA・3学年PTAを開催しました。1学年は総合学科カリキュラムの系列選択の説明を中心に、3学年は就職・進学の進路実現に向けたスケジュールの説明を中心に行いました。
 ともに大勢の保護者の皆様にお越しいただきました。心から御礼を申し上げます。

 3学年PTAの冒頭、校長あいさつでは、塔和子さんの詩を紹介しました。
 実は恥ずかしながら、私が塔さんの詩を知ったのは、つい1週間ほど前のこと。土曜日の朝、何気なく見たNHKの「あの人に会いたい」が、ハンセン病による強制隔離政策の犠牲になり、療養所で一生を過ごした塔和子さんの生き方を紹介していて、私は深い感動を受けたのでした。早速、古書店から全集本を取り寄せて、読みふけり、職員会、1学年PTA、3学年PTA…と別々の詩を紹介しながら、塔和子さんの詩をとおして『生きる』ということを考えてみました。


   胸の泉に
            塔 和子

 かかわらなければ                
 この愛しさを知るすべはなかった         
 この親しさは湧かなかった            
 この大らかな依存の安らいは得られなかった
 この甘い思いや                 
 さびしい思いも知らなかった           

 人はかかわることからさまざまな思いを知る    
 子は親とかかわり
 親は子とかかわることによって
 恋も友情も
 かかわることから始まって
 かかわったが故に起こる

 幸や不幸を
 積み重ねて大きくなり
 くり返すことで磨かれ
 そして人は 人の間で思いを削り
 思いをふくらませ
 生を綴る

  (……)

(小川から保護者の皆さんへ)
 詩人が言うように、「かかわった」からこそ、深い喜びや深い悲しみが、私たちには生まれます。
 私が、今、保護者の皆さんにお伝えしたいのは、かかわり、積み重ね、磨かれてきた親と子の「一緒の生活」は、残り半年で「終わってしまう」という厳然たる事実です。あと半年でお子さんは、家からいなくなるのです。家から会社に行くお子さんもいるかもしれませんが、その場合でも、もう今までのような関係ではいられません。お子さんの心は、家にはなくなります。
 そんな「かかわる」最後の半年です。
 この最後の半年に、親としてどう子どもを支え、どう自分の大切な言葉を子どもに贈るのか、親の一世一代の大仕事だと思います。
 私も皆さんを心から応援していきます!