「もっと遠くへ!」

Posted by 蘇南高等学校長. 2022年03月05日16:18
 卒業式の校長式辞は、原稿の読み上げではなく、パワーポイントを使用したスピーチにしています。
 蘇南高校第67回卒業式の式辞は、「もっと遠くへ!」と題しました。以下に後半部分を引用します。(前半では南アフリカとウクライナの出来事をとりあげました。)

(後半部分)
 卒業生の皆さんに、もう一人、世界を旅した人物のことを紹介します。
 今から54年前の1968年6月、イギリスのサンデー・タイムズが、一人でヨットに乗って、どこの港にも立ち寄らずに世界一周をするレース「ゴールデン・グローブ・チャレンジ」を開催しました。今ならば2カ月で世界一周ができますが、衛星電話もGPSもない54年前は、1年がかりの命がけのレースでした。
 9人の冒険家がイギリスのプリマス港を出発して、アフリカの喜望峰をまわりインド洋に出ていきました。その9人のうち7名が死亡または脱落します。
 レースは、フランス人のベルナール・モワテシエが先頭を走り、それをイギリス人のジョンストンが追いかけていました。フランスではモワテシエが国民的英雄としてたたえられ、彼がプリマスにゴールするところを大勢の国民によって出迎える準備が進められていきました。
 1969年2月、モワテシエは、南アメリカの先端部ホーン岬をまわりました。ここからは大西洋を一気に北上してプリマスを目指すのみです。陸上競技で言うと、最後のコーナーをまわって直線コースに入ったようなものです。
 ところが、このときにモワテシエがとった行動に、世界中の人々が驚きます。

 彼はヨットの方向を変えて、なんと2巡目の世界一周に乗り出してしまったのです。結果として2番手であったイギリスのジョンストンが栄冠をつかみ、賞金5000ポンド(約3000万円に相当)を獲得したのでした。
 モワテシエは、ヨットの近くを通ったタンカーに、丸めた手紙をパチンコで投げつけて、メッセージを世界に伝えました。そこにはこう書いてありました。

――(勝つという)記録に意味はない。海にこそ私の幸せがあり、心が救われる。だから私は航海を続ける。

 結局、モワテシエは、なお半年、世界二周の航海を続けました。

 皆さんにとって、高校時代のゴール・目標とは、何だったでしょうか。単位をちゃんともらうこと、テストで80点をとること、恋人ができること、インターハイに出場すること、希望する会社に入ること、大学に合格すること…。保護者の皆さんならば、子どもが無事に高校を卒業すること…。
 でも皆さんはわかっています。そこは最終的なゴールではない。
 ゴールが目の前に見えてきた瞬間に悟るのです。自分には、もっと先に別のゴールがあるのだと。さらに言えば、ゴール・目標は達成できたかどうかではなくて、チャレンジをしている自分自身に一番の意味があるのだと、わかってくるのです。
 勝つかどうかに意味はない。人生という海を旅するということ、そこに幸せがある。だから挑戦を続ける。

 そのとき、海は、みなさんの「ふるさと」になる。

 長野県蘇南高等学校から2022年の世界へ、心からの拍手とともに、皆さんを送り出します。

 もっと遠くへ!
 どうか、人生の遠洋航海を楽しんでください!

(全文は https://www.nagano-c.ed.jp/sonan-hs/pdf/20220305_sotugyousiki_sikiji_2.pdf
  


「誰かのためにという思いとレスポンス」

Posted by 蘇南高等学校長. 2022年03月05日11:55
 本日、第67回卒業証書授与式を挙行することができ、48名の卒業生が天白の丘から飛び立ちました。
 天気予報は雨(または雪)だったのに、朝起きてみると、快晴に! しかも今日は、朝日が南木曽岳の頂上から登ってくるではありませんか。奇跡的な光景を見ることができました。

 来賓には、向井南木曽町長さん、伊藤教育長さんに代表して出席していただきました。コロナ禍のなか、お越しいただけなかった皆様には、この一年間の歩みをまとめたものをお送りします。また、後日、ケーブルテレビでダイジェスト番組を放映していただきます。

 卒業生答辞を前生徒会長の澤渡さんが読みました。以下は要旨です。
――互いの「心の距離」を縮めたいと思っている私たちの前に常に立ちはだかったのは、「物理的な距離」をとらねばならないという、時代の要請であった。本当にこのことがつらかった。でも生徒会活動を進めていくとき、つねに自分たちの心の中には「誰かのために」という思いが、根底にあった。そしていつも全校のみんなが、その思いに「レスポンス」を返してくれた。そのことで自分たちは前に進むことができた。この日々は忘れられない思い出になるだろう。大きく成長できた高校時代のたくさんの経験をもとに、未来に歩んでいきたい。

 卒業生、保護者の皆さん、本当におめでとうございます。
 私たちもまた、皆さんとの「心の距離」を縮めたいという思いに、たくさんの「レスポンス」をいただき、生きることの喜びを経験させていただきました。
 今日という日の思い出は、一生の宝物です。